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Hokkaido Digital Museum

北海道の歴史と文化と自然

大地が育んだ想像力―文学

北海道にゆかりのある多くの作家たちが、さまざまな作品を生み出してきました。明治以降、北海道が文学のなかに現れるのは、〝内地〟から北海道へ旅したり、一時的に住んだりした人の作品が中心となります。幸田露伴の「突貫紀行」「雪紛々」、国木田独歩の「空知川の岸辺」、岩野泡鳴の「放浪」などです。また、短い間でしたが石川啄木が小樽、函館などで暮らし、優れた歌を詠みました。そして、いよいよ「北海道文学」が大きく羽ばたいていきます。

個性ゆたかな作家たち

有島武郎は〝北海道文学の父〟といえる大きな存在です。彼によって、はじめて北海道はその風土から生まれた文学を持ったといえるでしょう。「カインの末裔」「生まれ出ずる悩み」「星座」などは、北海道を舞台にして、半世紀にわたって厳しい自然とあい対してきた人間たちの営みを色濃く反映しています。有島武郎は、後の作家たちにも大きな影響を与えました。小林多喜二「蟹工船」、久保栄「のぼり窯」、早川三代治「土と人」、本庄陸男「石狩川」、小熊秀雄「飛ぶ橇」などは、いずれも「カインの末裔」などにそのルーツを見つけることができます。

農場開放直前の、有島農場事務所にて(写真提供:有島記念館)
有島武郎(1878-1923年/写真提供:国立国会図書館)

中城ふみ子(1922-1954年/写真提供:帯広市図書館)

森田たまと素木しづは同期生として札幌高等女学校に学びました。〝現代の清少納言〟と呼ばれた森田たまは北海道ではじめての女流作家であり、素木しづは〝樋口一葉の再来〟と呼ばれ、ともに大正期の文壇で高く評価されました。
昭和前期に、〝北方的抒情〟と呼ばれるものをもたらしたのが、伊藤整の詩集「雪明かりの路」です。彼はその後、有島武郎の系譜とは別な流れで、都会に生きるインテリゲンチャの屈折した心理を掘り下げる小説を書き続けました。

1956(昭和31)年、原田康子の「挽歌」が大ベストセラーとなり、それが北海道への観光ブームを呼ぶなど、社会的事件とまで言われました。それから8年後、朝日新聞社の1千万円懸賞小説に三浦綾子の「氷点」が当選し、これまた大ベストセラーとなりました。また短歌では、戦後「乳房喪失」がベストセラーとなり31歳の若さで夭折した中城ふみ子がいます。

『蟹工船』初版本(写真提供:インテリジェント・リンク/市立小樽文学館蔵)
小林多喜二の『蟹工船』自筆原稿(写真提供:インテリジェント・リンク)
本庄陸男著『石狩川』(1939年 大観堂書店/北海道立文学館所蔵)

このほか、「小説・心臓移植」でデビューした渡辺淳一は、「化身」「失楽園」「愛の流刑地」など、恋愛をテーマにした作品で幅広い読者を得ています。荒巻義男は北海道では珍しいSFの作家で、「紺碧の艦隊」は大ヒットしました。
より若い世代では、時代人情ものの宇江佐真理、警察ものなどの佐々木譲、恋愛ものの藤堂志津子、探偵ものの東直巳、サスペンスものの鳴海章などに人気があります。また、夭逝した佐藤泰志の作品が再評価され、いくつかの作品が映画化されています。最近では「ホテルローヤル」で直木賞を受賞した桜木紫乃が注目を集めました。

北海道にある文学館

北海道立文学館

北海道出身の文学者や北海道にゆかりの深い文学者に関する文学資料を展示しています。


函館市文学館

石川啄木など主に函館市にゆかりのある作家に関連する資料を展示しています。


市立小樽文学館

小林多喜二、伊藤整をはじめ、小樽ゆかりの小説家、詩人、歌人、俳人の著書や資料を収蔵、展示しています。


有島記念館

有島武郎の人と作品、武郎が所有した農場の足跡を紹介しています。


渡辺淳一文学館

渡辺淳一の直筆原稿や写真などさまざまな資料を展示して、渡辺文学を紹介しています。


三浦綾子記念文学館

全国の三浦綾子ファンの募金によって建てられた文学館で、三浦綾子の作家活動、作品、人生の歩みをたどることができます。


井上靖記念館

井上靖の自筆の取材ノートをはじめ、直筆原稿、文学作品、親交のあった芸術家の作品などを展示しています。

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