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Hokkaido Digital Museum

北海道の歴史と文化と自然

広がる多彩な表現-絵画・彫刻

長い冬を越えて春が訪れ、花々が一斉に咲きほこる北海道の季節感は、日本のほかの地域にはありません。遠くに見える山並みやどこまでも続く大平原も北海道らしい風景です。そこで暮らす人びとの意識のなかから、多彩な表現が生まれました。ここでは近代から現代にかけての絵画と彫刻について紹介します。

日本画、洋画、彫刻の分野で活躍した作家たち

岩橋英遠「秋韻」(1987年/滝川美術自然史館所蔵)

北海道の日本画は、明治30年代半ばに菅原翠洲が美術教師として赴任し、狩野派の筆法を伝えました。その後、斬新な画風で注目された帝展の山口蓬春などを経て、昭和の時代になって岩橋英遠、片岡球子という、日本を代表する日本画家が現れました。
岩橋英遠は北海道の厳しい自然を憂愁に満ちたイメージで描き出し、一方の片岡球子は伝統にとらわれず思いきった構成と原色で華やかな世界を表現しています。画風は対照的ではありながら、どちらも北海道の風土に根をもつ日本画家といえるでしょう。

洋画では、有島武郎が結成した札幌農学校の「黒百合会」が、美術の普及に大きな役割を果たしました。この有島との出会いによって、絵の世界に入ったのが木田金次郎です。彼は岩内に生まれ、漁師として生きながら雄渾な海の風景を描き続けました。その姿は有島の「生まれ出ずる悩み」に活写されています。三岸好太郎は大正から昭和の初期にかけ、モダニストとして近代日本洋画の青春期を駆け抜けた画家です。また中村善策は、明るい光に満ちた開放感あふれる風景画で知られています。

木田金次郎「大火直後の岩内港」(1954年/木田金次郎美術感所蔵)
三岸好太郎「飛ぶ蝶」(1934年/三岸好太郎所蔵)

戦後、北海道らしい画家として注目されたのが、神田日勝です。日勝は鹿追町で農業をするかたわら、独学で油絵を描きはじめました。ベニヤ板にペインティングナイフやコテで農耕馬や牛などを描いた、力強いタッチの具象画で有名です。
田辺三重松はがっしりとした骨格に力強く絵の具を肉付けしていく画法で、北海道の雄大な風景を描きました。西村計雄は斬新な構図と色彩で独特の世界を構築し、40歳になってからフランスに居を移し、ヨーロッパで高い評価を得ました。難波田龍起は高村光太郎に会って絵画に目覚め、戦後、抽象画家として活躍しました。その作品はまったくの抽象でありながら、日本的な詩情がただよっています。

神田日勝「馬」(絶筆/1970年/神田日勝記念館所蔵)
西村計雄「月と桃の花」(1977年/西村計雄美術館所蔵)

彫刻では、写実的でありながら深い内面を表現した人物像で知られる中原悌二郎、生き生きとした女性像をブロンズや木彫で表現した佐藤忠良、彫刻の社会性、公共性を重視してモニュメンタルな野外彫刻に力を入れた本郷新がいます。安田侃はイタリアをおもな拠点としている彫刻家で、大理石やブロンズを使った量感のある野外作品が国際的に高い評価を得ています。アルテピアッツァ美唄はその作品を展示するためにつくられた公園です。また、砂沢ビッキはアイヌの伝統を受け継ぎ、木彫でアニミスティックな世界観を表現したユニークな彫刻家です。

中原悌二郎「若きカフカス人」(1919年/中原悌二郎記念旭川市彫刻美術館所蔵)
安田侃「妙夢 MYOMU」(アルテピアッツァ美唄/写真提供:彫刻家 安田侃-KAN YASUDA sculpture)

北海道にある主な美術館

北海道立近代美術館

主として明治以後の北海道美術の流れから、各分野のすぐれた作品を系統的に収集・保存。また、国内外の近代以後の作品、特にガラス工芸、パスキンを中心とするエコール・ド・パリの作品なども積極的に収集しています。


北海道立三岸好太郎美術館

日本近代洋画史に鮮やかな光彩を放った札幌出身の洋画家・三岸好太郎の作品と関係資料の収集・展示などを行っています。美術館の設計の一部に、三岸好太郎のアトリエのイメージを取り入れています。


北海道立旭川美術館

旭川出身の洋画家・難波田龍起など、道北地方ゆかりの作家や木の造形作家に焦点を合わせた作品を中心に収集・展示しています。


北海道立函館美術館

「道南の美術」「東洋美術と書」「文字記号に関わる現代美術」を中心とする近代以降のすぐれた作品を収集しています。


北海道立帯広美術館

帯広百年記念館や動物園が隣接する文化ゾーンにあり、国内外のすぐれた美術を幅広く紹介しています。道東ゆかりの代表的な作家の作品のほか、国内外のポスター、版画を中心とする近現代のプリントアート等を多く収集しています。


北海道立釧路芸術館

写真などの映像作品、自然をテーマとする作品、釧路・根室地域と関連する作品などを系統的に収集し、特色あるコレクションづくりを行っています。


札幌芸術の森美術館

緑豊かな公園「札幌芸術の森」のなかにある美術館で、彫刻や現代美術、札幌の美術を紹介する展覧会を中心に行っています。園内には、佐藤忠良記念子どもアトリエ、各種工房、野外ステージ、アートホール、貸しアトリエ、有島武郎旧邸などもあります。


網走市立美術館

網走出身の洋画家・居串佳一のほか、郷土出身の作家を中心としたコレクションを常設展示しています。


滝川市美術自然史館

美術部門と自然史部門を併せ持った博物館で、美術部門では滝川ゆかりの日本画家・岩橋英遠、洋画家・一木万寿三、書家・上田桑鳩の作品を常設展示しています。


苫小牧市美術博物館

美術部門と自然史部門を併せ持った博物館で、美術部門では苫小牧の美術界をリードし続けた洋画家・遠藤ミマンをはじめとする郷土作家の作品を収蔵・展示しています。


市立小樽美術館

小樽にゆかりのある美術家の作品を中心に収集、展示するとともに、特定のテーマに基づいた特別展を開催、また美術講座、美術散歩を実施しています。小樽出身の風景画家・中村善策、小樽で活動していた版画家・一原有徳の作品をそれぞれ常設展示しています。


木田金次郎美術館

岩内町に生まれ生涯を過ごした画家・木田金次郎の作品を収蔵・展示しています。また、地域住民が関わるイベントも数多く展開しています。


西村計雄記念美術館

共和町出身でパリを拠点に活動した洋画家・西村計雄の作品を中心に収蔵・展示しています。豊富な作品を多彩な角度から紹介する二つの展示室のほか、西村計雄が晩年を過ごしたアトリエを再現した「復元アトリエ」などがあります。


神田日勝記念美術館

北海道を代表する新具象の洋画家・神田日勝の初期の油彩画から、最晩年の絶筆「馬」(未完)までの代表作群のほぼ半数を常設展示しています。


中原悌二郎記念旭川市彫刻美術館

日本の彫刻史に偉大な足跡を残した旭川ゆかりの彫刻家・中原悌二郎を記念した彫刻専門の美術館です。中原悌二郎の現存する12作品をはじめ、彼に多大な影響を与えたロダンや荻原守衛などの作品を展示しています。

関連施設
  • 施設名中原悌二郎記念旭川市彫刻美術館ステーションギャラリー
  • 住所旭川市宮下通8丁目3-1(JR旭川駅東口)

本郷新記念札幌彫刻美術館

戦後日本の具象彫刻を牽引し、モニュメンタルな野外彫刻の制作に情熱を注いだ札幌出身の彫刻家・本郷新の彫刻・絵画など1,800点余りの作品を収蔵・展示。現代の彫刻家を紹介する特別展も開催しています。


アルテピアッツァ美唄

閉校になった小学校の学校跡地を活用した野外彫刻公園です。美唄出身の彫刻家・安田侃が設立時から関わり、40点あまりの作品が木々の中に配置されています。体験工房での彫刻のワークショップのほか、さまざまな展覧会やコンサートなどが開かれています。

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