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Hokkaido Digital Museum

国宝・中空土偶と世界遺産となった遺跡を訪ねる

昆布と縄文の里として知られる函館市南茅部(みなみかやべ)地域にある垣ノ島遺跡。太平洋を望む丘の上に、今から約9,000年〜3,000年前の長期間にわたって大規模な集落があった(出典:JOMON ARCHIVES)

2日目

函館の市街地から北東部の南茅部地域へ移動して、いよいよ国宝・中空土偶と、「北海道・北東北の縄文遺跡群」の構成資産である二つの遺跡を訪ねます。

函館市内のホテル

directions_car 車で約45分

函館市縄文文化交流センター

南茅部地域は、海岸段丘の平坦地に多くの縄文遺跡が連続して残され、これまでに発見された遺跡の数は90カ所以上。なにか工事をするたび「遺跡にあたる」ので、毎年途切れることなく発掘調査が行われている土地です。「函館市縄文文化交流センター」は、国宝・中空土偶を常設展示するほか、垣ノ島遺跡、大船遺跡など、地元の遺跡からの出土品約1,200点を展示しています。かつてこの土地にいた人々の痕跡を、いま同じ場所でみていると思うと不思議な時間の流れを感じます。

センターの建物は波をイメージしたデザインで、階段を降りると一番広い展示室 があります。土器、石器、骨角器といった多種多様な道具類のほか、竪穴住居や貯蔵穴の様子などが美しく並び、まるで美術館のようです。どれも見ごたえ満点ですが、なかでも世界最古(約9,000年前)の漆製品や、赤漆塗り注口土器などは当時の人々の技術の高さと緻密さに圧倒されます。その隣りの細長い展示室には、小さな子どもの「足形付土版」が並び、当時の人々が命を大切にし、循環と再生を信じていた心を伝えています。

北海道唯一の国宝・中空土偶の展示はレプリカではなく原品で、中空土偶としては国内最大の高さ41.5cm、約3,500年前のお墓から出土しました。学芸員の太田哲也さんによると、来館は特に冬がおすすめです。
「中空土偶はたいへん精巧につくられていて、見飽きることがありません。冬は比較的お客様が少ないので、精密な文様や全身をじっくり見ることができます。
縄文時代は漁労・狩猟・採集を生活の基盤とし、1万年以上の長きにわたって平和で安定した時代が続きました。文化の発展のスピードは緩やかでしたが、自然からあらゆるものを『いただく』ことで豊かな生活をしていた様子がうかがえます。縄文文化交流センターは、そうした縄文について深く学ぶことができるので、多くの方々にご来館いただければと思います」
また、「体験学習室」では現在「組みひもアクセサリーづくり」と「縄文ペンダントづくり」を実施しています(所要時間約20分〜60分)。縄文のモノづくりに挑戦してみましょう。

体験メニューでつくる組みひもアクセサリーと縄文ペンダント
さまざまな土器や道具は地域の遺跡から出土したもののごく一部
垣ノ島遺跡の墓から出土した漆製品(複製)。遺体は腐食して残っていないが、頭部、両肩、両腕、両脚にあたる部分から、漆糸製品がみつかった
子どもの足型を押しつけて焼いた土製品。大人の墓から出土し、亡くなった子の形見として副葬したとも考えられている
南茅部地域、著保内野(ちょぼないの)遺跡から出土した北海道唯一の国宝・中空土偶(愛称カックウ)。展示室の月あかりに見立てた照明の下、一人静かに佇んでいるように見える(写真提供:函館市教育委員会)

函館市縄文文化交流センター MUSEUM ページへ

おうちミュージアム

http://hjcc.jp/12_stay_home.html
directions_walk 徒歩約3分

史跡垣ノ島遺跡

縄文文化交流センター駐車場横のゲートをくぐり、階段を降りると、そこはもう垣ノ島遺跡です。数年前から整備が進められ、世界遺産登録が決定した翌日、2021年7月28日より一般公開されました。広々とした敷地内は遊歩道があり、気持ちの良い空間になっています。一番の見どころは、当時の地形をそのまま生かした国内最大級の盛土遺構。3列の長い土堤をコの字形に配置したもので、長さ約190m、幅120m、高さ2m以上という大規模な遺構です。ここで長期にわたって土器や石器などが廃棄され、「モノ」の魂を送る祭祀や儀礼のための場所だったと考えられています。

現地には専門スタッフが常駐し、1日3回(10時・13時・15時)遺跡内を詳しく解説してくれるので、ぜひ時間を合わせて参加しましょう。また、1日2回(11時・14時)発掘調査の体験も行っています。参加者はレクチャーのあと地中に埋まった本物の土器片などを掘り、実際の作業を体験することで、考古学の楽しさをより身近に感じることができます。

手前が函館市縄文文化交流センター、その奥に広がるのが垣ノ島遺跡(出典:JOMON ARCHIVES)
竪穴建物跡
函館市縄文文化交流センターと遊歩道

垣ノ島遺跡管理棟

北海道函館市臼尻町416-4 TEL:0138-25-2030(函館市縄文文化交流センター)
4〜10月は9:00〜17:00、11〜3月は9:00〜16:00、年末年始(12/29〜1/3)休み
https://www.city.hakodate.hokkaido.jp/docs/2020013000109/
directions_car 車で約5分

「縄文ランチ」

遺跡見学でお腹が空いたら、ひと休みして昼食タイムです。南茅部には縄文文化にちなんだ料理を提供する店がいくつもあり、世界遺産登録を機にさらなる盛り上がりをみせています。そのなかの一つ、「一松仕出し店」がつくる「中空土偶弁当」は、特産の昆布やクリ、イカやエビなど地元食材をふんだんに使い、土偶をかたどったご飯が楽しいお弁当です。お天気が良い日は、縄文人も見ていたであろう目の前の海を眺めながら、屋外で「縄文ランチ」はいかが。

土偶の顔をモチーフに雑穀米を使い、甘納豆やクリで顔を表現した「中空土偶弁当」。縄文にちなみ、昆布を三つ編みにした煮物も入っている(※3日前までに要予約)

一松仕出し店

北海道函館市川汲町726 TEL:0138-25-3410
7:00〜17:00、不定休
https://peraichi.com/landing_pages/view/itimatu/
directions_car 車で約15分

史跡大船遺跡

世界遺産を構成するもう一つの遺跡、大船遺跡は今から約5,500年~4,000年前の大規模な集落跡。これまで100棟以上の竪穴建物跡、盛土遺構、土坑群などがみつかっていて、なかでも深さ2mを超える大型の竪穴建物跡は、これほど大きなものはほかの遺跡ではあまり見られません。遺跡は現在、竪穴住居や盛り土遺構を復元した「縄文のにわ」、当時の環境の復元を目指す「縄文の森」、いろいろなイベントや体験を行う「体験学習広場」として整備、一般公開しているので、時間をとってゆっくり見学するのがおすすめです。こちらも1日2回(10時・15時)に専門スタッフによる解説があります。

大船遺跡からは大量の土器や石器などのほか、炭化したクリの実がたくさん出土しています。クリは食用としてはもちろん建築材としても広く利用され、もともと北海道には自生していなかったので、縄文時代に本州から持ち込まれたと推測されています。当時の集落の周囲には、クリをはじめ落葉広葉樹の森が広がっていたと考えられ、現在は市民がクリやブナ、エゾヤマザクラなどを植樹し、かつての森の復元を目指しています。

発掘当時をしのばせる竪穴建物跡や盛土遺構、上屋構造を骨組みで再現した竪穴建物、屋根をふいた竪穴建物など、遺跡を立体的・平面的に表している(出典:JOMON ARCHIVES)
竪穴建物の骨組み(復元)(出典:JOMON ARCHIVES)
屋根を復元した竪穴建物と竪穴建物跡。その後ろはかつてクリ林が広がっていた(出典:JOMON ARCHIVES)

大船遺跡管理棟

北海道函館市大船町575-1 TEL:0138-25-2030(函館市縄文文化交流センター)
4〜10月は9:00〜17:00、11〜3月は9:00〜16:00、年末年始(12/29〜1/3)休み
https://www.city.hakodate.hokkaido.jp/docs/2020013000093/
directions_car 車で約15分

道の駅 縄文ロマン南かやべ

ふたたび函館市縄文文化交流センターに戻り、お土産探し。オリジナルグッズが充実していて、公式ガイドブックをはじめ、中空土偶をデザインした野帳やピンバッチ、ふせん、マグネットなどがあります。また、センターと一体化した「道の駅 縄文ロマン南かやべ」の売店には、特産ガゴメ昆布や真昆布製品、土偶にちなんだお菓子などが並んでいます。縄文人もよく食べていた木の実、クルミが入ったオリジナルソフトクリームも好評です。

「中空土偶野帳」は表紙が固いので、屋外でのメモに便利
クルミのパウダーを練り込んだ「縄文クルミソフト」。少しほろ苦い味わい

道の駅 縄文ロマン南かやべ(函館市縄文文化交流センター)

函館市臼尻町551-1 TEL:0138-25-2030
毎週月曜、年末年始(12/29〜1/3)休み
4〜10月は9:00〜17:00、11〜3月は9:00〜16:30
directions_car 車で約10分

南茅部地域の温泉で夕食・宿泊

南茅部には川汲、大船下の湯、上の湯などの温泉があります。自然に囲まれた温泉宿で、のんびりと旅の疲れをいやしましょう。

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