土偶
森町遺跡発掘調査事務所
最終日は南茅部から噴火湾に沿って北上し、駒ヶ岳のふもと森町へ向かいます。
森町は、北海道最大規模のストーンサークル(鷲ノ木遺跡)があるまちとして知られています。鷲ノ木遺跡は約4,000年前(縄文時代後期)のもので、世界遺産「北海道・北東北の縄文遺跡群」の関連資産の一つにもなっています。2002年、道央自動車道の工事中に発見され、現在は高速道路のトンネル上で大切に保存されています。
見学会以外は遺跡に入ることができませんが、森町遺跡発掘調査事務所で鷲ノ木跡のジオラマや貴重な出土品を展示・公開しています。学芸員の片山弘喜さんにお話を聞きました。
「ジオラマはかなり精巧に作っていますので、遺跡全体の雰囲気を感じていただけると思います。ストーンサークルの近くから出土した埋設土器や板状土偶、鐸形(たくがた)土製品などと合わせて見ると、さらにイメージがふくらみます。機会があればぜひ見学会にも参加して、壮大なスケールを体感していただければと思います」
ストーンサークルは三重の楕円形に大小約600個の石が並べられ、長径は約37mにも達します。周りに墓があることから、儀式を行う神聖な場所だったと考えられています。また、立冬のストーンサークルからは、駒ヶ岳頂上に朝日が昇る様子が見られます。特別な日、特別な場所で、縄文の人々はどんな気持ちで山を見ていたのでしょう。
森町遺跡発掘調査事務所では、約半分が鷲ノ木遺跡、もう半分は町内の縄文・続縄文遺跡から出土した遺物を展示しています。出土品のうち、特に他では見られないものが「イカ形土製品」です。2002年に鷲ノ木4遺跡から3つの破片が見つかり、つなぎ合わせて修復すると、ふっくらしたイカの形になりました。北海道南部から東北地方で祭祀に使われた鐸形土製品の一つで、国内最大級の高さ11.5cm、そして、森町名物の「いかめし」によく似ています。
「噴火湾に面する森町は、漁労が盛んだった縄文時代の遺跡が数多くみつかっています。鷲ノ木遺跡をきっかけに、ほかの遺跡にも目を向けてもらえたらと思います。道南の縄文文化はひとくくりにされがちですが、地域ごとに違いがあるので、いろいろと比較しながら見てみてください」と片山さん。道南の縄文文化をめぐる旅は、また続編ができそうです。
イカ形土製品を見たあとは、道の駅「YOU・遊・もり」で現代の「いかめし」を購入しましょう。いかめしは道南の郷土料理で、1941(昭和16)年に函館本線森駅の駅弁として考案され、たちまち大好評となりました。道の駅1階の特産直売所には、町内複数の食品会社がつくる「いかめし」が並び、あっさり味、甘辛味など個性があるので、お好みを探してみてください。ほかにも地元産の野菜や魚介の加工品、お菓子、日本酒などがそろっています。
道の駅に隣接するオニウシ公園を抜けて、近くの青葉ヶ丘公園まで足を伸ばすと、「茅部の栗林」として道指定有形文化財になっている栗の林があり、樹齢200年を超す老木も見られます。栗は縄文人にとって食料であり、建材にも使う大切な存在。鷲ノ木遺跡からも栗の花粉が検出されています。縄文人もここで栗を育てていたかもしれません。栗林を眺めながら、いかめしを味わうのもいいですね。
道の駅を出て国道5号を北上し、落部インターチェンジから道央自動車道へ入り、10分ほど進むと「鷲ノ木遺跡トンネル」を通過します。遺跡を直接見ることはできませんが、さっき見たジオラマを思い出しながら、新函館北斗駅を目指します。
北海道にはまだ多くの縄文遺跡があります。また次の計画を練りながら、今回の旅を終わります。